岩名雅記監督・映画「朱霊たち」

舞踏家岩名雅記さんが映画を作られました。
2007年1月、ポレポレ東中野にて公開されます。http://www.mmjp.or.jp/pole2/


1988年以来、日欧で活動を展開する舞踏家、岩名雅記が彼自身の脚本、演出により35ミリモノクローム長編劇映画を制作した。岩名は1967年、ドラマ制作を志してTBS(東京放送)に入社したが時代状況の変化により69年これを断念、以後、演劇と舞踊に転進して以来実に37年が経過した。その間、映画制作への情熱いささかも失せず、今回日仏スタッフ協同で初の長篇劇映画を完成した。

本作品の舞台は第二次大戦7年後の東京。空から撒かれたビラを追って不思議な館にたどり着いた少年の夢と現実が織り成すドラマである。そこには陽射しに当たることの出来ない難病(病理学的にはポルフィリン代謝異常と言われるものだがここでは仮定された病い)を持った人々が幽閉されるように暮らしている。ケモノのヒズメの手を持って生まれ、見世物として口で文字を書く事を生業(なりわい)としてきた通称「ヒズメ」、お女郎でありながら心中未遂して心と体に傷を持つ女ネアン、そして話せず聴こえず歩くことも出来ぬ年齢不詳の女マリア、そして今朝縊死したばかりのカケラである。彼らは一日でも早い死を願って行政による「ガス放出」の日を待っている。彼らを監視するのが特攻帰りの男ヒノマルだが、戦争で死ねなかった無念と死んでいった仲間への哀惜とで自身もひたすら死を祈願している。そんな日に少年が館に舞い込み、その翌日、行政からガス放出の連絡が来る。死ぬことの出来る喜びも束の間、たとえヒノマルが前年冬に館から脱走―
陽光死したマスキヨに成り代わりおおせても、行政の指定する「生き者5名」という条件に1人満たない。なぜなら自死したカケラをヒノマルが館の中にある道穴に放り込んでしまったからだ。噂によるとこの穴は山谷まで通じていると言う。生きる者5名という条件を満たす為には死んでいるカケラを何処まで続くか知れぬ洞穴へ捜しに行かねばならない。死にたい人間たちの最後の「生き様」が始まる------。

主題は「死を生きてみせる生命そのものの技術」という現代舞踏50年の基本テーマである。すなわち生の中に死の意識を認識することで初めて生というものが確かな手ごたえのあるものになることをドラマを通じて検証する。具体的には祈りと呪い、カタチとココロ、モノとヒトといった生命の実相を人間ドラマの展開と並行して「水」やさまざまな物質を通して描いていく。

キャストは舞踏家を中心に日本人のみならず、仏伊から個性豊かなキャラクターを選出、「演技」というよりは舞踏家の「存在」によるドラマを目指す。撮影は若干27歳ながらフィリップ・ガレル作品などを担当した女流仏人カメラマン、パスカル・マランである。

クランクインは2004年7月17日、岩名の仏・南ノルマンディ宅で開始、仏ブルターニュ海岸ロケ1週を含め8月末までにノルマンディ ペルシュ地方で主要部分の撮影を終了、20005年1月リテークを経て、2006年2月編集を完了。日本公開予定は2007年2月に内定、それ以前に仏カンヌ、スイス・ロカルノ、ベニス、ベルリン映画祭などに応募する。

制作は株式会社 環境テレビトラストと岩名の主宰する舞踏研究所 白踏館。
2006年4月、文化庁による「平成17年度・新人監督支援助成」を受ける。

■出演者
Mohamed Aroussi(仏)、Valentina Miraglia(伊)、澤 宏(以下日本人)、長岡ゆり、古澤たく、根岸良一、滝原祐太(子役)、若松萌野、七感弥広彰。

■使用機材 :アリフレックス 16SR, Beaulieu 4008 ZM4(回想部のみ)、
ボレックスH16 RX-5(日本での撮影)
■長篇 1時間44分・撮影白黒16ミリ、 スタンダード(158シーン・525カット)
           上映 DV-CAM
■スタッフ
*製作 株式会社 環境テレビトラスト
舞踏研究所 白踏館
*プロヂューサー 小泉 修吉、岩名 雅記、川井田博
*製作監督 ベロニク・レビ
*監督・脚本 岩名雅記
*撮影監督 パスカル マラン
*ポストプロ ティンゴ フィルム
*撮影協力 仏・ペルシュ地方自然公園+クールボワイエ城館
仏・ベルベンシェール自治体+ペリエール工場跡地
仏・サン・ブリヤック市役所+ギャルド海岸
仏・オルヌ県レベイヨン自治
仏。オルヌ県モルターニュ市と周辺町村
そのほか周辺市町村とペルシュ地方の人々。
*撮影機材協力 フランス・コダック社、テクノビジョン


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